身体の下で、憐れな獲物の身体が跳ねる。
紅く色付いた身体が、しなやかに何度も仰け反っては、艶やかに鳴くのを、サンダウンは満足そ
うに見下ろした。
砂の上に幾つもの模様を描きながら、汗に濡れた身体に砂を塗し、捕らわれた獲物は泣き叫ぶ。
手を伸ばした事に、特に理由をつけるつもりは、サンダウンにはない。
普段から自分を飽きもせずに追いかける賞金稼ぎを、こらしめてやろうだとか、二度と追いかけ
ないようにだとか、そんなつもりは全くなかった。単にサンダウンがその気になっただけの事。
いつものように、手の中から銃を弾き飛ばしてやった後、その身体を地面に押し倒した。
突然のサンダウンの行為に、彼は驚いて逃げを打ったが、腹を殴ってその動きを止めてやる。痛
みに悶える身体から衣服を引き裂いて剥がし取るのは、この上なく簡単な行為だった。
「止めろ、……止めろっ!」
衣服を引き裂かれる行為に、それの意味するところが何なのか分かったのだろう。若い男の口か
ら、はっきりと怯えが零れた。抵抗しようと腕を振り上げ、サンダウンの肩を押しのけようとする。
その、荒野に生きる男にしてみればあまりにも細すぎる両腕を、サンダウンは片手でやすやすと押
さえこむと、驚愕と恐怖だけだった瞳に、はっきりと悔しさが滲みだしていた。
その気の強い眼差しに、サンダウンは薄く笑う。そして、引き裂かれた着衣の隙間から覗いてい
る赤い二つの突起ぞれぞれに、唇と指を伸ばした。
「あっ……!?な、何を……っ!?」
胸を啄ばまれて、男の口から信じられないというような響きが漏れる。その声を聞きながら、サ
ンダウンは捉えた突起を、指先では些か乱暴に、舌では優しく責め立てる。
「や、止めろ…あ、やっ……!」
身を捩る男の口から、微かな喘ぎが漏れた。それに小さく笑い、サンダウンは胸に吸い付いたま
ま、未だその身体に纏わりついている衣服を引き裂いていく。
サンダウンは、捕えた獲物を逃すつもりはなかった。そもそも、捕えると決めた時から、こうす
る事――犯すつもりだった。そんなサンダウンの考えを読み取った獲物は、必死になってもがき、
必死で逃れようと長く形の良い脚で地面を掻く。
尤も、そんな抵抗はサンダウンにとっては憐れなほど力なく、あっさりと押さえ込む事ができた。
サンダウンの凌辱を止める事が出来る者は、この荒野においては何一つとしてない。睨み上げな
がらも怯えを孕んだ表情をしている獲物は、無防備な裸身をサンダウンの前に曝すしかなかった。
「っく、……ぁ、あ……!」
サンダウンは、舌で若い身体をなぞっていく。一部の隙もなく、その肌に唾液を塗り込めていく。
その丁寧さは、凌辱と言うにはかけ離れていた。そして、若い肌の上に散在している性の濃い部分
を、掘り起こしていく。的確に身体を責められた事によって、青年の唇からは否定以外の声が漏れ
ていた。
「ぅうう、……ぅあ。」
サンダウンの舌が、脇腹や胸の尖りを掠めていくたびに、ひくひくと、綺麗に筋肉の付いた細身
の身体が反応する。それに伴い、弱々しい喘ぎが零れる。
その反応を楽しみながら、サンダウンは彼の反応が特に著しい場所を執拗に嬲り始めた。首筋か
ら鎖骨、乳首から臍、腰骨から内腿へと舌を滑らせ、賞金稼ぎに声を上げさせる。
「離、せ…さわ、るな…!うぁっ、く…はぁっ…」
言葉は拒絶しているが、そこに灯った音は完全に蕩けている。何よりも、身体は強張るどころか
解けきって、腰が微かに淫らに揺らめいている。サンダウンの舌で解されたそこは、サンダウンに
よって与えられた熱に馴染み、薄桃色に染まっていた。
そして、形の良い脚の間では、瑞々しい屹立が透明な蜜を零して、はっきりと欲を示している。
「………感じるのか。」
その言葉は揶揄めいたものも込めていたが、微かに敏感な男の肌に対する感嘆も含まれていた。
しかし、それに男が気付くはずもなく、良いようにされてしかもサンダウンの言う通り感じている
自分の状況に、かっと頬を赤く染めた。
ぎり、と歯噛みして、何かを言い返そうと唇を開いたその瞬間を見逃さず、サンダウンは青年の
膨れ上がって充血した乳首を舐める。
「あっ…ひ、あぅ、あ…ああ…!」
途端に、堪え切れなかった声が一気に吐き出される。輪を描くようにしてなぞり、きゅっと摘ま
むと、電流が走ったかのようにその身体は反り返り、堪らないと言うように嬌声が上がる。臀部を
撫で、臍に舌を差し込めば、ますます欲を煽られてしまうのか、青年の口から声が途切れる気配は
なかった。
「………濡れているぞ。」
「…ちが、っ嘘だ……こんな、の…!」
耳元ではっきりと感じている事を指摘してやると、首を横に振って否定する。だが、滴を落とし
ている陰茎は、快楽が感じている事を否定しない。
「は…っ…ぁうっ…あ…いぃ…い、い……ッぁ…あ…!」
敏感になった身体を震わせる青年は、自分の身体の変化に戸惑っている。しかしそれ以上に、サ
ンダウンの手管によって、何度も押し寄せる快感に流されそうだった。
「あ…はぁ……んんっ…!」
嫌がりながらも感じる賞金稼ぎの姿を見下ろし、サンダウンは自分の身体を徐々に下へと移動さ
せていく。やがて、青年のすんなりとした脚を持ち上げると、はしたなく液を纏う果実の更に奥、
固く閉じた蕾へと舌を伸ばす。
「う、あっ…っ、嫌…嫌だ…!…止めろ…やめ、…ぁあっ……!」
舌が入り込んでくる。それを受けて、賞金稼ぎは快感に流されるがままだった眼を大きく見開き、
哀願した。だが、サンダウンは容赦なく、舌で青年の粘膜を掻き混ぜた。その瞬間に、青年の中で
はっきりと淫らな熱が花開いた。
「っあ、あぁあっ…ぅああっ…!」
疼いていた敏感な内部を、思う存分に舐め回される。その暴力的ですらある快感に、青年はその
刺激だけで達していた。
ただし、それは先端から微かに零れ落ちるだけの、もどかしい絶頂だった。
「はっ、ぁひ…い…ぁあ…あっ…!」
切なく声を上げるのを聞きつつ、サンダウンは、二、三度同じ快楽を与え続ける。その度に、憐
れな獲物は悲鳴を上げ、その強い快感に弱々しい白濁を零し、じれったさに身を捩るのだった。眼
には涙が浮かび、煽情的な色に濡れている。
「ん……ぁん…。」
どれだけ快感を与え続けただろうか。ようやくサンダウンが舌を引き抜いた時、若い身体は力な
く弛緩し、サンダウンが両腕の拘束を解いても、快感の余韻が強すぎるのか逃げ出そうともしなか
った。
その様子にほくそ笑んで、サンダウンは賞金稼ぎを抱き起こすと背後に回り、その両膝に腕を差
し入れ長い脚を抱え上げる。その瞬間、はっとしたように抱えた身体が強張った。解された蕾に当
たる固い物が分からぬはずがない。
「っ…や、やめろ…や…やめ、…いや、だ……や、…!」
その哀願に、しかしサンダウンが応じる謂れはない。この荒野では強い者が弱者を支配する。例
え眼の前にいる男が、賞金稼ぎの王であってもサンダウンよりも弱い者であれば、サンダウンが略
取するには十分すぎる理由だった。
それ故に、サンダウンは賞金稼ぎの王を支えていた腕を離す事に、一切の躊躇はしなかった。
「っぁああああああああ!!!!!」
自重でサンダウンを呑みこまされ、若い王が絶叫した。眼を見開き、男に犯される衝撃に呆然と
している。サンダウンは、この賞金稼ぎが誇り高い事を知っている。特にサンダウンの前では絶対
に屈しようとしない事も。
それが、今、サンダウンの手によって犯されている。その事実を、サンダウンも、何よりも彼自
身も実感している。
青年から唇から零れる吐息は、少し苦い。それらに、サンダウンも少しばかり顔を顰めた。
だが散々解した蕾が、苦痛でさえ柔軟に受け入れ快楽に変化させるであろう事を、サンダウンは
既に予測していた。
「あ…はぅ…あ…うう…。」
ひくひくと震える身体は、そうしているうちに受け入れた質量に馴染み始めたのだろう。纏わり
つくように動き始めた内壁を感じ、サンダウンは眼の前の身体が快の兆しを手に入れた事を知る。
「…は…ぅう…ぁ…あ…、ふ…。」
頬を染める賞金稼ぎの快を更に深めるべく、サンダウンは、舌で、手で、再びその身体を嬲り始
めた。震える内腿を撫で、赤く熟れた乳首を啄ばむ。
「んぁっ…は、ぁあ!……ふ、ぁ!」
感じ入った声で鳴く男を見て笑い、サンダウンはゆっくりと突き上げた。
「っぅああ…あ…ああああっ……ぁは…!」
身を逸らせ、快感に喘ぐ姿。きっと誰も見た事がないであろう姿に舌なめずりし、更に深く突き
上げる。
「もっ…嫌、だ…これ、以上…!うぁあああっ…!」
強すぎる快感と、何よりもサンダウンに犯されているという事実に打ちのめされて、泣き叫ぶ賞
金稼ぎ。しかし当然の事ながら、それが聞き入れられはしない。
いつも強気な光を浮かべる瞳が情欲の色に染まり、その眼でサンダウンだけを見ている。その身
に荒れ狂うような命を内包し、そして誰からも愛される身体が、そうやって地に堕ちる様が、サン
ダウンは見たかった。
「ひっ、やめ……!あああ、ぃい、いあっ!……キッド、や、ああっ!」
サンダウンの名を呼んで憐れに懇願する賞金稼ぎを、サンダウンは夜が明けるまで犯し尽くした。
サンダウンは舌打ちして、自分のの下にある、冷たく棒のような身体を突き飛ばした。ずるりと
一切の昂ぶりもない自身が、氷ような洞穴から引き出される。その摩擦でさえ、サンダウンには如
何なる熱も与えなかった。
突き飛ばされて、唯一身体を支えていたサンダウン自身を引き抜かれ、支えるもののなくなった
細いだけの身体は、そのままつんのめって地面に転がる。
だが、その様子を最後まで見る事なく、サンダウンは身支度を整える。転がった、未だ少年の域
を出ない身体から、地面と肌が擦れて絞り出された血の匂いや苦鳴が湧き起こっても、それらは蠅
の羽音ほどの興味でさえ、サンダウンの中に引き起こさなかった。
何よりも、今のサンダウンは、細く端正なだけで全くの熱のない身体よりも、激しく色を誘う光
に気を取られている。その光は、サンダウンの中に、何故かは知らないが先程までの行為に対して
微かに罪悪感を呼び起こさせた。
サンダウンは誘われるままに、光を感じたほうを見やる。
基本的に光の差さない、闇でさえくすんで見える世界では、微かな光でさえ肌で敏感に感じる。
まして、異形の獣達が自ら発光する、やはり歪んだ光以外のものとなれば。
光を見上げて、サンダウンは、肌で光を感じた一瞬のうちに湧き起こった回想を再び思い出し、
危うくその場で達しそうになった。
深い霧のようなくすみに覆われた夜の空。その中で、まるで抵抗するかのように、掠れた月が浮
かんでいる。その周囲を縁取る闇は、そこだけ、本来の闇の色を取り戻しているかのようだ。それ
はまるで、砂の上に散った潤んだ瞳を思わせる。
「………っ。」
あれと、同じ、色だ。
それに気付けば、凌辱した時の快感も一気に思い出される。それは脳内で広げられるだけでなく、
鼻腔でも肌でも、舌先でも、その匂いや味が再現されるようだ。
今、自分の足元で白々しい気配と冷めきった血の匂いを噴き上げている少年など、掻き消されて
しまう。どれだけ、その冷たい体内に突き入れて揺さぶっても一度も昂ぶらなかった欲望が、じわ
りと擡げてきた。
サンダウンは木の根元に放り投げていたポンチョを掴むと、それを羽織り、転がって荒い息を吐
いている少年の上を通り越す。さくり、と枯れ葉を踏みしめる音が、少年の息を掻き消した。消え
てしまった音になど、もはやないものとして、サンダウンはさくさくと土に戻る気配のない枯れ葉
を踏みしめながら、やはり枯れかけた木々で構成される森を突き進んでいく。
木々の間を時折窺いながら、より、木の枝が視界を遮らない場所へと歩を進めていく。
そして、開けた場所に出て、ようやく息を吐いて天を仰いだ。
見上げる先には、怯えたように掠れた月があった。
それに、そっと手を翳す。しかし、当然の事ながら、届かない。その弱々しい光でさえ、サンダ
ウンの掌全てを照らすには、至らない。
それほどまでに、遠く離れた場所に来てしまったのだ。
その事実に今更ながら気付かされ、サンダウンは苦々しい表情を浮かべる。それでも光が此処に
届く事が良とすべき事なのか、サンダウンには分からなかった。ただ、その光が、この場所には到
底似つかわしくないという事だけは、嫌でも理解できた。
此処にあるのは、今にも破綻寸前の空気ばかりだ。何か一つでも手元が狂えば、そのまま転がり
落ちて、二度とは元に戻らないだろう。事実、サンダウン自身、自分が狂気の一歩手前にある事を
理解している。
ああやって、自分と同じく薄汚れた少年を犯す事でしか、正気を保っていられないほどに。
少年を犯す最中に現れた月を見上げ、そこに浮かぶ光が糾弾なのか断罪なのか見極めようとした。
しかし、遠く離れたそれからは、何の答えも聞こえてこなかった。
その遠さが、再びサンダウンを打ちのめした。