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  おかしいな、と思った。
  
  最近、自分を執拗に追いかける賞金稼ぎに逢わない。いつも獲物を見たら追いかける猟犬のよう
  
 に、来る日も来る日もサンダウンの首を狙う彼が、ここ数日とんと姿を見せなかった。
 
 
 
  気配一つ見せぬ彼に、一番最初に思ったのは別の賞金首を追いかけているのかという事。
  
  賞金稼ぎである彼は、当然賞金首を撃ちとってその生活費を稼いでいる。いくら彼が腕の良い賞
  
 金稼ぎでも、寝ていて賞金が転がり込んでくるわけではない。何処かで、サンダウン以外の賞金首
 
 を追いかけて仕事をしているはずだった。
 


  けれどもその場合は、そうした噂をちらほらと聞くはずだ。マッドが狙う賞金首は、大抵高額で、
  
 撃ちとれば、数日は話の種になる。だがそれが聞こえてこないところを見ると、どうやら別の賞金
 
 首を追いかけているわけではないようだった。
 
 
 
  では、怪我でもしたのか、或いは体調不良かとも思ったが、そういった話はやはり賞金稼ぎのマ
  
 ッド・ドッグともなれば噂にはなるし、そうした話も聞かない。何よりも体調管理には意外と気を

 使っている男が、そんな間の抜けた状態になるとは考えにくかった。
 
 
 
  では、何か。
  
  
  
  思いつく事は、あとはせいぜい、やっと諦めたのかという事だけだった。
  
  
  
  それは、マッドの事を考えても自分の事を考えても、途方もなく正しい事のように思えた。マッ
  
 ド一人がサンダウンを追わなくなる事でサンダウンの逃亡生活は格段に楽になる。また、マッドの
 
 若い生命の事を思えば、自分を追いかけて無為に時を過ごす事など止めてしまったほうが良いのだ。
 
 
 
  そう、納得しているにも関わらず、腹の底が妙に冷たい。
  
  安堵しているはずの心は、何故か思い出すのはマッドの表情や指先や、そのふとした瞬間の色ば
  
 かりだ。
 
  声音や瞳の形が隅々まで思い出せる事に、ほんのちょっとした発音を忘れている事に、一喜一憂
  
 しているのは。
 
  まだ思い出になるはずもない過去が、やけに胸の奥にせり上がってきた。
 
  
  
  
  
  











 04.懐かしむ