疲れてしまった。



  幾度となく繰り返してきた銃の応酬に後に、マッドが遂に思ったのはその一言だった。

 

  西部に名を轟かせるようになって、酒も女も仲間も、求めれば全て手に入るその中で、唯一手に
  
 入らなかったのが、サンダウンだった。

  荒野の果てまで追い掛けて、何度も何度も撃鉄を上げて、その度にあしらわれて。

  そして今の今まで命を奪われていない。

 
 
  止めを刺されない事を手放しで喜べるほど、マッドはおめでたくはない。

  殺されもせずに放置されるという事は、つまりマッドは殺す価値もない、銃口を向けるに値しな
  
 い小物だと思われているという事だ。

  それに対してどれだけ地団太踏んで、文句を言って追い縋ってみたところで意味はない。

  マッドがサンダウンに比べて銃の腕が劣っている事は、これまでの決闘の結果から見ても明らか
  
 な事で、ならば勝者であるサンダウンがマッドにどんな評価を下そうが、それはサンダウンの勝手
 
 であり、敗者であるマッドには口出しする術はない。
 
 

  どれだけ勝負を挑んでも少しも縮まらない差に、マッド自身も苛立っている。

  少しは何か手ごたえを感じられるのならともかく、全く縮まらないそれに、マッドが自分自身へ
  
 の罵倒の末に諦めを口にしてもそれは仕方のない事だった。
 
 

  何よりも、これまでの間、サンダウンが一度としてマッドをその視界に捉えようとしない事が、

 マッドの意地を砕いている。

  マッドは、何処にいてもサンダウンの気配だけはすぐに分かるというのに。

 
 
 「もう嫌だ。」


  
  口を突いて出た弱音は、自分でも思っていた以上に弱々しかった。それに苦笑いすると共に、そ
  
 れほどまでに弱っている自分を自覚して、項垂れる。



  自分を此処まで追いつめたのは、サンダウンだけだ。

  それほどまでに手に入れたくて、ずっと追いかけてきた。

  けれども、それが限界にきている。

  今諦めれば、きっと後悔するだろう。だが、このまま追い続けていけば、自分が壊れてしまうの
  
 も眼に見えている。
  
 

  手の届かない太陽に向かって飛び続けて、最後には翼が溶けて落ちてしまう少年のように。  

 

 「もう、嫌だ。」



  もう一度呟いて、マッドは眼を閉じた。















 03.諦める