新しき朝は来たり
  さかえある日は昇る








  己の制作者でもあり、そして良き指導者でもあるカトゥーが、さっと広げて見せた赤い布を見て、
 キューブはそれを即座にクリスマス時期に良く使用される、サンタクロースの被る帽子を模した帽
 子であると悟った。
  しかし、それの口を広げ、ぼすっと自分の、人間で言うとろろの所謂頭に被せられた時は、カト
 ゥーが一体何を期待しているのか分からなかった。
  カトゥーはキューブを、ほぼ人間と同等に扱った。それ故、例えロボットとして全く意味のない
 行為でも、きっとカトゥーにとってはとても重要なものであり、キューブも自分にとってそれが何
 らかの大切な意味を持つのだろうと理解できないままに、思考回路の一部に最重要記録として位置
 付けていた。
  それ故、この帽子を被る事も、キューブの中に『人間らしさ』を培おうとするカトゥーにとって、
 重要なことなのだろうと結論付けたのだが。
  キューブの結論に反して、カトゥーは普段ならばこういう行為をした後はどこか『嬉しそう』と
 判ずる顔をしているはずなのだが、今日の彼は何か困ったような表情をしていた。

 「ううん………大丈夫かな………。確かに僕やダースさんがいるとはいえ………。」

  ぽろりと零された、カトゥーに次いでキューブの記憶領域での保存量が多い人間の名前に、キュ
 ーブはこの帽子が、カトゥーではなくダースの意思によるものであると判断した。尤も、ダースが
 何故こんなことをキューブにさせようという気になったのかは、まだ分からないが。

 「だってキューブは、まだあんまり、大勢の人の前に出た事がないし。子供と一緒に遊ぶなんて大
  丈夫かなぁ………。」

  何度も溜息を吐きつつ、独り言を零し続けるカトゥーの、断片的な情報を繋ぎ合せると、こうい
 うことだ。
  軍を退役し、福祉に力を入れたダースから、キューブを福祉施設のクリスマス会に出して貰えな
 いかという要請があったのだ。身体に障害を持つ子供達が多い施設では、キューブのようなロボッ
 トはきっと喜ばれるだろうと。
  確かに、味気ない人間の姿を模したばかりのロボットよりも、キューブのように愛嬌のあるロボ
 ットのほうが子供達も喜ぶだろう。
  しかし、キューブは所詮ただの作業用ロボットだ。福祉用のロボットに比べれば、性能面では劣
 る面がある。それにキューブは大勢の人間に囲まれるという経験がない。作られたばかりのキュー
 ブは、そもそもクリスマスも知識としてあるものの、それが実際にどういうものなのかという経験
 をしたことさえないのだ。
  以上諸々の理由で、カトゥーは本来の心配性の面を遺憾なく発揮し、おろおろとしているのだ。
  そのクリスマス会を、既に明日に控えているというのに。
  そもそもダースも、キューブは特に何もせず、ころころと子供達の周りを歩いているだけで良い
 と言っている。特別な作業はしなくていいと。つまりキューブが気をつけることは、子供たちにぶ
 つかったりしないということだけ。
  それを、カトゥーは子供の入学式を迎えた親のように、どうしようどうしようとうろたえている
 のだ。

 「大丈夫かなあ………。」

  自分用のサンタの衣装を抱えたまま、自分がサンタの格好をすることには些かの不安もないのか、
 カトゥーはもう一度、そう呟いた。
  それをさっきから延々と見続けているキューブは、ロボットにはあるまじき事に、思わず溜息を
 吐きたくなった。 











  伝えよ、その福音を
  広めよ、聖き御業を
  たたえよ、声の限り