白いシーツは、ランプの光を浴びて茶色がかったオレンジ色に染まる。闇の中、つ、と灯ったそ
 れは煌々と照り輝き、シーツの上に走る皺を妖しく際立たせていた。
  その上に落とされたマッドも、また、同じように妖しい影をその身体に刻み込んでいる。浮き出
 た鎖骨や喉仏の影はくっきりと張り付き、臍や先程まで散々嬲られていた胸の突起まで影を撓めて
 存在を主張している。
  そして脚の間で苦しげに反り返った、マッドの欲望も。
  いたずらにかさついた手が、ぴん、と胸の突起を弾くたび、そこは震えて湿度を高めていく。首
 を横に振ってマッドは拒絶を示すが、それは無論、何の効果も意味も持たない。今のマッドには何
 の拒否権もないのだから。
  男の指と舌を受け止めて、淫らに泣き叫び、腰を振る以外の事は、マッドには許されていない。
 明りの下、脚を大きく押し開かされても、マッドは抵抗も出来ないまま、その視線に耐えるしかな
 かった。

 


  遊底





 「あ………いやっ………。」

  乳首を散々嬲られて、それだけで限界ぎりぎりまで感じさせられたマッドは、しかし達する事は
 出来ないという状態のまま、ベッドの上に転がされた。熱を灯した――けれども火花ではなく、燻
 るような熱――身体は、力は抜けていないのに動けないという状態で、マッドはひくひくと震えな
 がらサンダウンの好きなように身体を動かされていた。
  サンダウンは後ろ手に縛られていたマッドの腕を一旦解くと、そのまま頭上で一纏めにし、再び
 縛り上げる。快感に身体を犯されているマッドは、碌な抵抗も出来ない。
  胸を赤く腫らし喘ぐ姿をサンダウンは一度見下ろすと、今度は投げ出されたままの両脚を掴んだ。

 「ああ………。」

  左右に開け放たれ、敏感な部分が冷たい外気に曝される。その感覚に思わずマッドは声を上げて
 しまった。抗議でもなく拒絶でもなく、はっきりと感じていると分かる声を。
  その声にサンダウンは薄く笑い、しばらくの間はマッドの脚を片足だけ持ち上げたり、胸に突く
 ほど抱え上げたりと様々な角度を楽しんでいたが、最後はマッドの踵がベッドからはみ出るくらい
 まで押し開くと、ベッドのサイドに括りつけていた荒縄で両足首を一本ずつ縛り上げ、閉じられな
 いようにしてしまう。
  股を大きく開き、閉ざす事も許されない身体。それを、ランプの炎が焼き焦がすようにじりじり
 と照らし出している。
  隠す事が出来ない自分の醜態に、マッドは硬く眼を閉じて小さく懇願した。

 「明り、消せ………っ!」
 「駄目だ。」

  しかし、サンダウンはマッドの懇願を一語で拒絶すると、その無防備に何もかもを曝した身体に
 乗り上げる。

 「あ、あ、ぁあああっ。」

  サンダウンの唇が再びマッドの赤く熟れた乳首を挟む。もう一つの乳首はかさついた手で苛めら
 れる。そして乳首を弄っていないサンダウンのもう一本の腕は、大胆に開いたマッドの太腿を撫で
 回す。

 「ん、は、ああっ。」

  膝裏から内腿、脚の付け根へと、時に揉みしだくように撫でられ、マッドは自由を奪われた脚を
 戦慄かせた。その小さなさざめきも、ランプの光は受け止め、淫猥な影を作り上げる。
  確実にマッドが感じる肌を暴いていくサンダウンに、マッドは信じられないくらいに敏感になっ
 ていく。触れられるだけで過敏に反応する身体は、快感の所為かしっとりと濡れ、達する事を望ん
 でいる。
  だが、サンダウンはマッドの胸や腿を責めるだけで、液を纏って弾ける時を待っているマッドの
 雄には手を触れない。マッドの吐息は既に熱く、声は感じ入っているのに、そこから先に進ませよ
 うとしない。

 「んっ……ふぅ……っん……!」

  救いを求めるように腰を捩るマッドの身体の熱さに、サンダウンは耳元で問うた。

 「………熱いのか?」
 「っ、熱い………、もぅ………っ!」

  焦らすようなサンダウンの動きに、マッドがそう叫ぶと、サンダウンの影がすっとマッドから離
 れた。不意に離れた熱に、マッドは安堵とも不安ともつかぬ溜め息を零し、冷めない熱を散らそう
 というように、何度も胸を上下させて呼吸をする。
  マッドが息をするたびに、熟れた乳首がてらてらと光るのを見て、サンダウンはそこに狙いを定
 めて銀色の口を擦りつけた。

 「ひぃあっ?!」
 「…………こうすれば、すぐに冷めるだろう?」

  突然押し付けられた、ひんやりとした感触にマッドは声を上げる。そんなマッドにサンダウンは
 笑い含みの声で囁いた。
  散々嬲られたマッドの乳首には、冷たい輝きを放つ真鍮の筒――ピースメーカーの銃口が押し当
 てられているのだ。金属特有の硬質な口付けは舌や指とは全く違った感触で、更に皮膚との温度さ
 もあって、マッドは過敏に肌を震わせた。
  しかし、そんなマッドの様子を知っているサンダウンは、ピースメーカーを離そうとはせずに、
 むしろ擦り上げるようにマッドの乳首を押し潰す。熱い身体に対して、銃口の冷たさは刺激となり、
 よりマッドの乳首を敏感にさせていく。

 「あんっ、ああぁあぁんっ!」

  電流のような刺激が乳首から全身へと広がり、マッドは両脚を突っ張るようにして、先程よりも
 更に激しく腰を振る。達く事が出来ないのが不思議なくらい、マッドは感じている。しかし、やは
 りそこだけを弄られてもマッドの雄は震えを増すばかりで、欲を放とうとはしない。達する事が出
 来ない故に、快感は上塗りされるばかりで、それがいっそうマッドを苦しめる。 
  そして、甚振られてぷっくりと膨れ上がったそこから、ようやく銃口が離れた時は、マッドはた
 だ痙攣するだけのものになり果てていた。
  だが、サンダウンはそんなマッドを見ても、容赦はしなかった。まだ銃口に口付けられていない
 もう片方の乳首に狙いを定めると、同じように嬲り始める。

 「んぁあ、ああぁぁっくぅあっ、や、はあぁぁあっ!」

  途端に、弓なりに撓るマッドの身体を銀色の銃口は無慈悲に蹂躙する。左右に乳首を薙ぎ倒され、
 マッドは喉を引き攣らせ、高い声で鳴く。腰を何度もシーツに打ちつける姿は、完全に快感に我を
 忘れた獣のようだった。
  たらたらと苦しそうに糸を零すマッド自身を見て、サンダウンはようやく乳首を責めるのを止め、
 銃口をそっと腹筋へと滑らせる。

 「ふ………あ、あぁ、はぁ………っ。」

  やっと終わりを告げた責め苦に、マッドは小さく声を零しながらも、そっと力を抜く。未だに銃
 口は熱を持った身体の上を辿っているが、しかし先程までの激しさのないそれに、マッドは溜め息
 を零した。
  まるで、自分の状況を忘れているかのようなマッドに、サンダウンは思い出させるかのように呟
 く。

 「…………良い眺めだ。」
 「……………っ!」

  サンダウンの見下ろす眼差しに、マッドは息を詰めた。
  抵抗を封じられた腕と、犯されて赤く熟れた胸の突起。そして揺れる腰と開かされた脚。その間
 ではっきりと感じ入って液を纏う雄。
  それらは全てランプによって曝され、サンダウンの双眸に映し出されている。
  その事を思い出した瞬間、マッドは顔に熱が上がるのを感じた。いや、それどころか身体に籠る
 熱も上昇したようで――。

 「どうした………恥ずかしいのか?」
 「ぅう………っ。」

  きゅっと眼を閉じ、マッドは顔を背ける。
  恥ずかしいに決まっている、こんな格好。男の前で脚を広げて秘所を曝け出して。しかも、胸を
 散々弄られ、あられもない声を上げてしまって。
  それどころか、銃で身体をなぞられて、感じているなんて。 
  ピースメーカーが腹筋をなぞり臍にねじ込まれて、マッドは否応なく歓喜故に肌を波打たせる。
 這い回る銃口が、今からマッドを撃ち殺すかもしれないのに、マッドはその想像にさえ欲情してし
 まう。

 「そんなに、これが、良いのか………?」
 「あ………っ!」

  銀色の口付けが臍の下へと移動し、下生えを食むのを感じてマッドはびくんと身体を跳ねさせる。
 限界まで反り返っていた欲望が、更に硬度を増したようだ。
  それを見下ろし、サンダウンはピースメーカーをマッドから放してしまう。

 「ぁあ………。」
 「恥ずかしい身体だ……自分でそう思わないのか?」

  銃口が離れた寂しさに声を上げてしまうマッドに、サンダウンは囁く。その言葉にマッドは頬を
 赤く染めるが、しかし身体に積もった欲は誤魔化しようがない。
  羞恥と快感に震えるマッドは、十分に嗜虐の対象になった。しかし、サンダウンとしては、まだ
 足りない。マッドにはもっと辱めを受けて、痴態を曝して貰わねばならない。ぐずぐずに溶けて、
 最後は恥辱を忘れて、快楽に堕ちて行くほどに。

 「安心しろ………ちゃんと、隠してやろう。」

  優しく耳元で囁かれて、マッドは薄っすらと眼を開く。しかし次の瞬間、彼は驚愕に眼を見開く。

 「や、嫌だっ!止めろ!」

  身体に巻きつく黒い紐に、マッドは悲鳴を上げるが、抵抗できぬ身には容赦なくそれが絡みつく。

 「嫌……?何故?お前はいつもしているだろう?」

  胸から脚の間までを覆い隠す黒い布を、眼を細めて眺めやりながら、サンダウンはずり落ちない
 ようにとマッドの細い腰の後ろで紐を結ぶ。

 「いつも、この姿で、料理を作っているだろう。」

  今、マッドの身体を――胸から脚の間までを覆い隠すもの。それは、サンダウンが言う通り、マ
 ッドがこの小屋で料理をする時に使っているエプロンだ。黒い布地のそれは、マッドの汗の浮かん
 だ身体に張り付いて、マッドの肌の白さを際立させている。
  その黒い影の裾から長く伸びた両脚が艶めかしく、隠された雄は、しかし布越しでもはっきりと
 欲情している事が分かってしまう。それをエプロンの上から撫でると、衣擦れの微妙な感触が堪ら
 ないのか、マッドは悲鳴を上げた。

 「……ぁあああっ!あっ!…はぁっ…ふぁあああっ!」

  布越しの愛撫が、股間だけでなく乳首にも襲い掛かる。
  こんな凌辱とは無縁のはずの布で身体を絡め取られて、浅ましい声を上げる自分に、マッドは否
 定するように、首を打ち振るう。
  だが、それを意図して、全く別の意味と受け止めたサンダウンは、ねっとりとマッドの耳朶を舐
 め上げた。

 「そうだったな………お前は、こっちのほうが好きだったな。」
 「っ!あああっ!」

  ぐり、と銃口が再び胸を責め始めて、マッドはあまりの喜悦に仰け反る。小さな突起は、今や黒
 い布地の上からでも分かるほど尖り切って、銃口による愛撫を求めていた。ピースメーカーがそれ
 を薙ぎ倒すたび、マッドの身体は耐えられないというように、びくびくと身じろいだ。

 「こちらも、触って欲しいか………?」

  そう言って触れられたのは、今までずっと放置されていたマッドの欲望。布越しにサンダウンが
 撫でるだけで、きちんとした刺激は与えられていない。
  そこに、つ、と銃口が添えられる。
  あ、とマッドは眉根を寄せて、何かに耐えるような――何かを期待するような眼差しを浮かべる。
 しかし、マッドが制止の声や希求の声を求める前に、ピースメーカーは銀の銃口で激しくそこを扱
 き始めた。

 「うぁああ…あぁ…!」

  がくん、と跳ねる身体。撓る背中は銃口の愛撫から逃れようとするかのような動きだが、対して
 腰はうねり、もっと、と求めているようだ。

 「あぁ――――。」

  ようやく与えられた、はっきりとした快感に、マッドは眼を潤ませて感じ入った吐息を零す。そ
 してその声は徐々に高まっていき、完全に嬌声に移り変わった。

 「んくっ!!くぅうっ!!うああっ!!!!」

  銃口に犯され、マッドの雄はその蹂躙に喜び絶えず液を零している。じわり、と布にいやらしい
 染みを作り上げるのをサンダウンに見られても、それを理解する力は今のマッドにはない。それよ
 りも、今はただ与えられる快楽を追い掛ける事だけが、マッドの全てだった。

 「ぁあああっ、んはぁああっ!」

  腰を持ち上げて、強請るように自分から擦りつける。すると、欲望を甚振る銃口の動きが、更に
 強まり、マッドのそこは先端も茎も袋も全て、押さえ、潰され、扱かれる。マッドを責める動きは、
 マッドに狙点を定める時と同じくらい的確で。
「ああ─────あぁ──ッ」

  マッドは撃ち殺される瞬間のような声を上げ、逐情を果たした。